RPA・ソフトウェアロボットによって変革が求められる人材派遣業界はどう変わっていくのか

RPA、ソフトウェアロボット、AIといったキーワードから多くの人が連想するこのひとつに「ロボットに仕事がとられる」という失業があります。もちろん、そうしたことは一部で起こりえることですが、それと同様に新しい仕事も大量に生まれていきます。かつて、産業革命の際に、多くの農業従事者たちが農業の効率化によって失業したものの、都市部で工業系の労働者として新しい職に就いたことなどは具体的な先例といえます。

”人材こそが労働力である”という時代の終焉。ソフトウェアロボットも労働力としてカウントされる時代が到来する

現在、労働市場において労働力というのはほとんどが人、人材を意味します。しかし、今後、ソフトウェアロボットやAIといったものが、普及段階に進んでいくと、こうしたものが既存の”システム”という考え方から”労働力”と呼ばれるものにシフトしていくことになります。そうなると労働力の確保という表現が、必ずしも人材を採用するということと同意ではなくなる可能性があります。

事務系が主流の人材派遣会社は何もしなければRPA・ソフトウェアロボットによって売上、利益ともに縮小していく未来は避けられない

そうした時代において、もっとも直接的に影響を受ける市場のひとつが人材派遣業界です。特にパソコンを利用した一般事務、経理事務など、事務的な業務を主流としてる人材派遣会社は、RPAやソフトウェアロボットの市場と完全に競合することになり、正確性、処理能力、費用を比較されていくことになります。当然、一般的な人間がソフトウェアロボットと比較して、単純な処理において量や質で勝つことは難しいため、手をこまねいていると確実に市場は縮小していきます。しかし、これは人材派遣会社が現状を維持し続けた場合において起こる事態です。

人材派遣会社は労働力派遣会社と定義し直すと市場規模が飛躍的に大きくなる

人材派遣会社が、労働力派遣会社への変化した場合は、これまで以上に市場規模を大きくできる可能性があります。勝てない人材を派遣するのではなく、勝てるソフトウェアロボットを派遣すれば、ピンチがチャンスにあっという間に変わっていきます。しかし、ここで重要なことのひとつが”ロボット派遣会社”ではなく”労働力派遣会社”であるということがあります。30年後についてはなんともいえませんが、これから当面の間、すべての業務を人に代わって行うソフトウェアロボットを導入するというのは、実現はできるものの導入企業の費用対効果の面からも好ましい投資にはなりえません。必ずソフトウェアロボットと、それをうまく利用して成果を出す”人材”が必要になります。人とロボット、両方を労働力として定義し、それぞれの良さを生かして両方を派遣することによって、派遣する会社、派遣される会社、働く人、すべてにとって好ましい状態を作り、さらには人材派遣業界の市場規模を飛躍的に大きくなっていきます。

課題はソフトウェアロボットを使ったオペレーションの設計ができる人と管理ができる人の供給量

理論上は良い未来が待っていそうですが、どんなビジネスにおいても課題はあります。いま、こうした動きを実行に移そうとした場合の課題として挙げられるのが「オペレーションの設計」と「ソフトウェアロボットの管理」という2点の業務を行うことができる人材の欠乏です。ソフトウェアロボットは簡単にいってしまえば、完璧な命令をすれば、完璧に動き続けることができますが、どんな業界の業務においても完璧な環境というものはありません。誤字脱字もあれば、納期の遅れもあれば、依頼したことをやってもらえないこともあれば、誰かが体調不良で休んでしまうことだってあります。人が見ても意味のわからないような資料を読み解き、的確にまとめなければならない仕事もあれば、そもそも正解のない、決裁者の独断で答えが変わるような仕事もあります。こうした曖昧で不可解な状態は、ロボットやAIが活躍するのには適した状態にはないため、活躍できるようにワークフローやルールの調整を行い、その上でどこにソフトウェアロボットを導入すると良いかを考える人が必要になります。これがオペレーションの設計と呼ばれるもので、現在はITコンサルタントなどが担当しているような業務です。また、ソフトウェアロボットの動作を監視し、不具合が発生した場合の対応、保守を行う人材も必要になります。現在は、ITエンジニアが担当しているような業務です。これらのいずれもが、人材の育成難易度が高く、供給量に課題があり、まだまだ普及に至るスタイルとはなっていません。こうした人材を、人材派遣会社が育成、提供を行のか、既存のシステムインテグレーターが行うのかで、業界構造は大きく変わってきます。システム開発の業界が人材派遣業界に侵食するのか、それともその逆になるのか。システム開発会社は採用難易度が高く、採用量を増やせないが育成難易度は低い。人材派遣会社は採用難易度が低く、採用量は増やせるものの育成難易度が高い。どちらにも課題がありますが、この動きは世界の既定路線となっています。今後も人とソフトウェアロボとの協力による業務がどうなっていくか、目が離せそうにありません。