あれもこれもとやることが増えていき、プロジェクトが肥大化して業務改善が失敗。そんな組織におすすめの成功確率をあげるための処方箋

業務改善はどんな組織でも生き残っていくために定期的に取り組む必要があるプロジェクトです。小さなものであれば毎日、毎週行っているという会社も少なくありませんが、経営指標の数値に大きなインパクトを与えるほどの投資が伴うものとなると、頻繁に行われることはありません。この手の大きなプロジェクトになると、まずはじめに実施されるのがヒアリングや調査で、その結果、大量の改善ポイント一覧ができあがります。

この一覧の恐ろしいところはどれをみてもやったほうが良いことがずらりと並んでしまうことです。どれも良さそうに見えるわけですから、当然、どれもやりたくなります。しかし、リソースは有限ですし、何より分散するよりも集中したほうが成果は圧倒的に高まります。

業務改善の投資を本当に活きたものにするためには、やるべきことのなかからこれだけに集中すればすべてが改善する、もしくは他の問題を不問にできる「ただひとつのこと」を見つけ出せるかどうかにかかっています。

施策をバリューチェーンでまとめて因果関係を整理する。そのうえで達成可能性と業務インパクトを加味すると「ただひとつのこと」が見えてくる

まず最初に注意をしたいのが、その施策が実現する前提条件を確認することです。そのために施策のバリューチェンを整理して、それぞれの因果関係をはっきりとさせます。たとえば、Aという工程がおわり、Bという工程がはじまるとします。この時、Bの改善をしても、Aが改善されていなければ、Bの改善結果は限定的です。Bを改善するための前提は、Aが改善されていることというわけです。たとえば、どんなに優れた営業リストがあったとしても、営業スタッフがいないのであれば意味がありません。営業スタッフがたくさんいても、売る商品がないのであれば成果は出ません。商品がどんどん売れても、納品ができなければ売上にはならないという具合です。ただし、最初の工程を選べばよいというわけではありません。すべての工程に影響を与える、経営指標に影響を最も大きく与えるものを選別することが重要です。

それを経営指標に最も大きく影響を与えるものを見つけ出すためには、「達成可能性」と「経営インパクト」を活用します。実現できる確率を「達成可能性」という数字にし、、目標とする経営指標への影響を「経営インパクト」という数字で管理します。達成可能性が50%で、経営インパクトが100だとすると、100×50%=50で、「50の施策スコア」という数値になります。対して、達成可能性が100%で、経営インパクトが60だと「60の施策スコア」となるわけです。これで求められた値をもとに選別を行い、本当に取り組むべきことを優先度と共に見つけ出していくわけです。

投資が成功するかどうかは「やったほうが良いこと」をいかに排除して「やらないと経営がだめになる」ものだけに集中できるかにあっかっている

ビジネス、経営についての知識を有している人が集まると、どうしても論点が広がり、アカデミックな机上の空論のようなきれいな話に寄っていきがちです。しかし、経営を本当に支えているものの多くは、普遍的な、当たり前なことばかりで、奇抜なものはそう多くはありません。あいまいな「やったほうが良いこと」をしっかりと排除して、どうやっても避けては通れない、やらないわけにはいかない「やらないと経営がだめになる」というものに投資を集中させることが成功への近道です。複雑で壮大に考えて、数か月かけて調査した結果、当たり前すぎる、社内のだれしもがわかっている問題の改善こそが大事だという結論に達するということも少なくありません。

投資は無限にできるものではありません。あれこれと手を付ける前に、本当に大事な集中すべきものを見つける作業に本気で取り組むべきことが、業務改善を成功させる近道といえます。