RPAやソフトウェアロボットの大量導入を検討することになったら要注意。高確率でプロジェクトをゼロから見直す必要があります
ソフトウェアロボット、RPAを導入する企業が増え続けていますが、そうした中で耳にすることが増えてきたのが「50台以上を導入することになったので結構な金額になった」といったような話です。当然、導入することによるメリットは間違いなくありますが、はっきりといえるのは”ソフトウェアロボット、RPAを大量に導入が必要な場合、それは問題解決が間違っている可能性が高い”ということです。
大量に導入が必要な時点でソフトウェアロボットを使って解決すべき事案ではない可能性が高い
ソフトウェアロボット、RPAといったシステムは、人の代替労働力として非常に優れているものであることは疑いようがありません。しかし、冷静に考える必要があるのが”代替である”ということです。ソフトウェアロボット、RPAが大量に必要な状況というのは、大量の人が必要な状況であるということと同じ意味となります。まず、労働集約型のビジネスは一般的に「みんなが喜んで投資をしたいビジネスではない」というのは事実です。その背景にはいろいろな理由がありますが、最もシンプルなものとしては売り上げに比例してコストも増える、つまり利益率に課題がでやすい構造であることが挙げられます。当然、事業継続性ということも重要ではありますので、短期的には利益を削っても問題を解決することは正しい選択といえますが、中長期的にみたときに利益を圧迫する選択を喜んで導入するのは間違いであるといえます。
「その業務がなぜ必要なのか」を考えることと本質的な問題解決への近道
ソフトウェアロボットなどを導入検討する際に、人件費と比較されることがあります。たとえば社員50人が必要だった業務があり、それが年間2億5千万円ほどの人件費がかかっていたとします。このとき、それと比較してロボットに置き換えると半額になる、大幅なコストカットに成功するというシナリオによって検討が進むことが多いわけですが、ここに落とし穴があります。まず、そもそも50人でやっていた業務ですが、これが「どうして50人でやらなければならなかったのか」という問題です。大量の入力作業があったりした場合、その作業をさばくために人数を増やし続け、その結果、担当する人員の数が膨らむということがあります。そして、いつしかそれが常態化してしまい、その人数でやること、その業務が存在することに疑問をもたなくなり、”その業務があるのは当然だ”というところから問題解決を図ると、大量のロボット導入という選択になっていきます。しかし、考えるべきは”どうしてそんなに大量の入力作業が必要なのか”という問いです。たとえば大量に入力が必要な作業が生まれるのは、その作業の前工程で「入力が必要な状態でアウトプットを作っているから」というのが理由です。また、入力しないでも同様の結果がデータとして作られる仕組みを改善すれば、こうした業務は削減することができます。
RPA、ソフトウェアロボットは、中長期的ではなく短期的な施策として計算をするのが正解
RPA、ソフトウェアロボットが優れている点としては、業務工程が明確で、ルールが標準化されているものであれば、人を採用して教育するよりも確実で、早く、業務処理を行うことができるという点です。しかし、一方で大局的な視点で業務改善を図らずに、安易にロボットを使って解決をし続けると、永遠にでてくるモグラをたたき続けるような行為であり、利益を圧迫する間違いを生み出すことになります。将来的に技術的革新が起こった後は別ですが、現在のロボットはまだまだ短期的な施策として利用するのが正解であり、中長期的に使い続けて業務のベースとなる労働力としてみるべきものではありません。もし、そうした捉え方が必要な状況にあるとしたら、もっと業務の構造的なところに目を向けて、本質的な問題を見つける必要があります。業務に携わる期間が長ければ長いほど、俯瞰的にみることができなくなりがちです。業務を大量にこなす、というところから考えるだけでなく、その業務そのものをなくすことができないか、ということを考えると問題解決の質は飛躍的に向上します。