DX、デジタル業務改善の実践的なプロジェクトの進め方

デジタル業務改善を成功させるためには組織的に取り組んでいく必要があります。そのために重要になってくるのが、会社で働くみんなの”気持ち”です。人間というのは非常にやっかいな生き物で、計算上正しいと理解できることと、感情的にやりたいことが違っています。高い目標を掲げて一生懸命がんばると自分に良いことがあるとわかっているが、つらいことを頑張るのはきついのでやりたくない。新しいものを学習して利用すると得をすることはわかっているけれど、いままでのやり方になれているから変えたくない、といったような感じです。では、そんな感情で動いているみんなが働く会社において、業務改善はどのようにすすめるべきでしょうか。

みんながプロジェクトの進行を待ち望む状態を目指す

業務改善のプロジェクトは、本当の意味での経営レベルでの効果を生み出すまでには年単位の時間がかかります。しかし、結果が見えないものに、長い年月にわたって高いモチベーションをもって取り組むのは、常人にはなかなかできることではありません。たくさんの人が関わるからこそ、短期間でみんなのやる気を引き出す初手が必要です。1年の我慢は難しくても、1ヶ月の我慢はほとんどの人ができるはずです。まずはこの1ヶ月でみんなに「もっとこのプロジェクトをすすめてほしい」と思わせる計画作りが重要になります。もし、この初手を間違ってしまうと社内の批判屋さんたちを勢いづかせることになり、いくら本質的に正しくとも、組織的に良い形での改善は難しいものとなってしまいます。どんな人も、文句がいえない、むしろ感謝してしまう、そんな感情面を考慮したプロジェクト進行にしていきましょう。そこでおすすめしたいのが「みんながやりたくない仕事」を自動化することです。

狙うのは”忘れがちな仕事”+”褒められることがない仕事”

やりたくない、不人気な仕事というのは必ずどんな職場にもあります。これは仕事そのものがつらいという場合もありますが、多くの場合は面倒なだけの仕事です。丁寧にやれば、特別難しいわけではないが、煩わしさを感じてしまう。その代表的なものは何かのリストを作る作業であったり、経費精算、定期的な集計をまとめる作業などです。リスト作りのように単調な作業は、人によっては好きという場合もあり一概に嫌われているとはいいきれない部分があります。それに対して、経費精算などのように月に1回、週に1回というように、定期的にあるものの頻度はそれほど頻繁ではないため「忘れてしまいがち」な仕事は、高確率で嫌われる仕事になります。さらに、大切なポイントが「褒められることはないが怒られる可能性がある」という仕事です。やるほどに褒められる、評価されるという仕事は、構造的に受け入れられやすいものです。しかし、やったところで誰も感謝もしないし、褒めてもくれない。しかし、やらなかったり失敗すると怒られるという仕事は誰がやっても嫌なものです。みんなに歓迎されるためには、こうした嫌な要素がたくさん含まれている仕事に狙いを定めてプロジェクトを検討してみましょう

営業などのプロフィットセンターの業務改善を最優先にすべき?

うちはとにかく営業を強化したい。だから営業の関連業務の業務改善を進めたいという場合もあると思います。当然、それがベストな場合もありますが、社内の花形の仕事は、最優先に進めなくて問題がないことも多く、冷静にプロジェクトの対象を見極めていく必要があります。なぜかというと多くの組織では目立つ部署の仕事というのは、恒常的に改善が加えられているためです。多くの会社では営業やマーケティングなどの部署の仕事は、売上に直結するため、また定量的に分析がしやすいため、日常的に業務改善は行われています。改めて、デジタル業務改善を集中的に進める必要がある会社はそれほど多くはなく、どちらかというと、他部署との連携であったり、他部署がボトルネックになっていたりということが多くあります。それは納品であったり、カスタマーサポートであったり、請求や入金確認などであったりです。多くの組織で問題が起きやすいところは、「みんなが注力しないところ」であったり「明確な責任を負う人がいないところ」であったりします。部署と部署をつなげるところや、地味に思われがちなところです。経営としてすべてをフローで考えれば、実は営業を受注するだけではだめで、納品、そしてサポート、請求や入金といったように、すべてが適切に流れている必要があることはおわかりになると思います。しかし、組織というのは、どうしても局所最適ですすんでいきやすいため、本気で業務改善を考える場合は、俯瞰的に事業を分析して、本当に改善すべき点を見つけ出すことが必要になります。

他社の事例を参考にしすぎない。あなたの会社はどこかのコピーではないことを踏まえて冷静に判断しよう

絶対に避けなければならないのは「正しいのはわかるがとにかく反対」する人が続出するプロジェクトです。そうならないために、あなたの会社を冷静に分析して、みんなが受け入れやすく、経営的にも望ましいところから着手していくだけです。業務改善を行うときは、特定のツールやクラウドサービスを販売している会社が、発表している事例などを目にして参考にしたくなると思いますが、あなたの会社は唯一無二の存在であり、どこかの会社のコピーではありません。他社の事例を参考にしすぎるのは黄色信号です。自社の業務の状況、ルールや文化、人間関係や発言力などをしっかりと分析して、成功できるプロジェクトを計画していきましょう