BtoBの世界で活躍しきれていない「チャットボット」を十分に機能させる方法

最近、オンライン上のチャットで簡単な受け答えをシステムが代行するチャットボットのサービスの導入が様々なところで進んでいます。多くはカスタマーサポートや営業対応といったところですが、こうした業務は労働集約型であるため、サービス提供には人材の採用、教育といったところで多大なコストがかかっています。しかも、人の定着に課題を持っていることが多い業務であることが多く、コストの削減、人の退職や入れ替えによる継続運用のための問題の改善を図りたいというところから導入の意向が非常に高い領域となっています。しかし、実際に導入した後の”成果”という点で見てみると、成功している事例の多くは、BtoCの領域に偏っています。なぜ、BtoBの領域では目立った成功事例がないのか。ここではチャットボットがBtoBの領域で成功しにくい原因と対策についてご紹介していきます。

チャットの的確さは発信者の語彙力と論理的思考力に依存する

チャットは気軽に話しかけやすいというのが最大のメリットですが、大きな問題も抱えています。それは適切なコミュニケーションを成立させるためには”発信者の語彙力と論理的思考力が高いレベルで必要である”ということです。チャットは短いテキストのやりとりを繰り返すものですが、短いテキストで的確に相手に意図を伝えるのは簡単なことではありません。たとえば、親の介護、子どもの教育、自分のこれからのキャリア、近隣の住民とのトラブルなどの問題を抱えている人が悩んでいたとします。複雑に絡み合ったら、大量の課題によって、もやもやとした状態にありますが、今の自分の感じている問題を相手に適切に短文で説明をし、自分が望んでいるソリューションの提案を受けるためのコミュニケーションを行うことが難しいのは想像に難くないと思います。それを実現できる人がいるとしたら、きっとその人は高い語彙力と論理的な思考力を持っているはずです。

一般的な人を相手にチャットでのサポートを成功させるためには”明確な目的”が必要

残念ながら高い語彙力と論理的な思考力を持っている人というのは、社会全体では比率は高くはありません。チャットをサポートの仕組みとして機能させるためには、より一般的な人でも十分に機能する仕組みを取り入れる必要があります。その仕組みとして機能するのが”明確な目的”です。たとえば目的が不明瞭なサイトにチャットサービスがあったとします。そこに「けいたい」と入力された場合、相手が何をもとめているのかは不明瞭です。しっかりと話を聞いてみると、「会社の通勤で持ち運びで出来るお弁当箱を探していた」ということもありえます。携帯性の高いお弁当箱を探し出すために「けいたい」と入力していたわけです。しかし、もしサイトの目的が明確なサイトにサービスが導入されていたとします。たとえば、携帯電話のECサイトであったとすると、その場合は「けいたい」と入力した人のほとんどは、「携帯電話」を意味する確率が一気に高まり、携帯電話についての話に絞り込んで、次に会話をチャットで投げかければ適切なコミュニケーションが成功する確率が一気に高まります。一般的な人たちを相手に、的確なチャットを成立させるためには、チャットの主題をどこまで明確にできるかが重要になっています。

BtoBの領域は検討ポイントが多く複雑に絡み合っている。チャットを始める前の目的の明確にする工程が作れるかどうかが成否をわけるポイント

BtoBの領域の難しさは、大きく2つにあります。1つは話しかけてくる人の目的が非常に複雑であるということ、そして2つ目は提供する側も目的が変動することもあるということにあります。この2つについて少し詳しく話をしていきます。たとえば、ある法人が自動化を進めたいと考えていて、自動化ソリューションについてチャットで問い合わせをしてきたいとします。この場合、対応をするチャットボットは、どんな自動化を求めているのかをヒアリングしていくことになりますが、実は自動化は”手段”であって”目的”ではないので話の展開はとても大変です。自動化の目的はいくつかあり、人件費を抑制したい、つまりコスト削減が目的の場合の自動化もあれば、コストがあがってもいいので稼働の安定性と生産力を高めるための自動化もあります。自動化という手段は同じでも、目的が全く違うため、相手が聞きたい話はかなり違ってきます。これに加えて、チャットボットで対応をする企業側においても、相手の会社次第で対応の目的が変わるため大変です。利益は無視して赤字でも付き合いをしたい場合もあれば、利益がでるかどうかだけを重視する場合もあります。お客様の対応といっても、目的は状況によって幅があり、相手次第で返答する内容が大きく変わってしまうわけです。このようにBtoBの世界では複雑に絡み合ったいろんな項目の情報を、総合的に判断をしないと適切なチャットを機能させることができないわけです。

なんとなく自動化をやってみたいのでチャットボットを導入してみようというだけであれば、簡単に導入することが可能ですが、効果を出そうと思うと非常に難しくなるのがBtoBのビジネスをされている法人です。チャットボットを機能させるためには、チャットボットが相手をする人の目的を徹底的に絞り込むこと、そしてチャットボットを提供する企業側も対応の目的を絞り込むこと、この2つを構造的な仕組み、企画で仕掛けていく必要があります。チャットボットの価値を考え、その効果を発揮できるように、しっかりと考えて導入を進めていきましょう。