業務の自動化を推進していくために最初に取り組むべきタスクは”データマネジメント”の完成度をあげること

AIやソフトウェアロボットなどの登場によって、急速に自動化への関心が高まっていますが、その波にいきなりのれる会社と、そうでない会社があります。まず、自動化の実現には、適した会社とそうでない会社があり、その差をわけるのが「データマネジメント」の完成度にあり、ここを抜きにして自動化は進めることができません。また、データマネジメントがうまくいっている会社は、組織としてIT投資戦略が明確で、データをつなげるための指針がしっかり存在しており、それに基づいてシステム導入をし続けた会社といえます。

管理すべきデータとは表面的にみえている業務の数値だけではない。働く人をコントロールしているKPIや就業規則といったものも同様に管理していく必要がある

多くの組織の中にある業務は、様々なデータの組み合わせでできています。顧客リスト、未顧客リスト、社内の担当者、営業の進捗状況、社内のスタッフのKPI、顧客の担当者、商品、納品管理など、非常に煩雑なデータの組み合わせによって構成されています。また、それぞれを生成したり、まとめたりするのは人になるわけですが、人は、営業マニュアルであったり、就業規則や人事評価のKPIであったり、こうした行動を制約するデータによって動かされています。

CRMやSFAの導入失敗の多くは分析すべきデータのスコープが誤っているから

多くの企業で導入されているCRMやSFAが、適切に機能しているケースが少ないのは、データとして管理される対象、スコープが不適切である場合が多く、データマネジメントが完成されていないためといえます。CRMであれば、顧客関連の情報が中心になってくるわけですが、その顧客データを生成するのが人がスタートとなっています。そうなると、分析においては、その人に関連した情報も必要になってくるのですが、そうしたところが抜け落ちているケースが多く、「データがあればうまくいく」ように作られているものの、そのデータが「人の問題によって作られないためうまくいかない」という事態が発生ています。理論上、正しいことが、実践的にはうまくいかない場合、理論と実践は違うものだからという人たちもいますが、この分野の失敗の多くは、システム設計する際に、実態としての組織を的確に分析できていない、能力不足である場合がほとんどです。

本当の実態を把握するためのデータがしっかりと把握できているか、そしてそれがつながっているか

多くの人たちは一生懸命、又はある程度はしっかりと働いているわけですが、それでも結果がでないのは構造の問題であることが多く、それを把握するためにもデータマネジメントは有効です。たとえば、人事業過上のKPIが新規開拓であるにも関わらず、既存顧客のフォローができていないといわれても、それを優先して仕事をする人はあまりいません。また、組織上、本来の職務ではない、雑務ようなものに終われ、自分の担当でもないミーティングに時間をとられている人間に、さらにKPIに関係ない業務を依頼すると起こる悲劇は、多くの人が想像できるものです。一般的なCRM、SFA、管理職の方たちが定量的に管理しているデータ以外に、組織の中には重要なデータが大量に存在しています。こうした実態に即した、適切なデータをしっかりと管理できているかどうか、こうしたところつなげてみることができる状態にまで至っているか、データマネジメントの完成度はとても重要です。

データマネジメントは自動化をはじめるための最初のステップ、急がば回れでデータマネジメントやIT投資戦略をしっかりやりきることが重要

データマネジメントが適切にできていない状態で、自動化を推進しようとしても、データの整理、業務改善といった一般的な整理業務にコストと時間が奪われることになります。また、こうした整理をはじめてみると、最終的にはこの基幹システムと、このクラウドサービスのデータはどうやってもつながらないから、人ががんばるしかないといった、自動化からは程遠い、原始的な問題を、原始的な方法で解決することになる場合もあります。自動化の検討は非常に魅力的ですが、こうした地味ではあるがとても重要なデータマネジメント、そしてそれを良好な状態にするためのシステムやデータがどうあるべきかというIT投資戦略をまとめて実行していくことが最初のステップです。ここを抜きにして、自動化の成功はありえません。着実に、一歩ずつがんばっていきましょう。