「自動化」の成功の確率を高めるためには”人が働く前提で作られた構造”から”人が介在しないで完了する構造”へのビジネス全体の変革が必要

一人に1台のパソコンや、エクセルやパワーポイントなどに代表される汎用業務を支援するソフトウェアは、多くの職場で当然の存在です。これらを導入していることで”自動化に成功している企業”と考える人は皆無です。しかし、一昔前まではこれらを導入することこそが生産性向上のための適切な行動であり、最高のアクションと考えられていました。では、今はというと、主役は「AI」や「RPA」といったものとなり、多くの企業がこれらの導入を急いでいる状態にあります。しかし、不思議なことにこれらを活用して成功したという事例は、パソコンやオフィス系ソフトの導入ほど、耳にすることはありません。多くの企業が注目し、導入しているにも関わらず、これを導入して成功したという話は、ベンダー側がコストをかけて作る、提灯記事以外に耳にしないのはどうしてでしょうか。その答えはただひとつ、ほとんどの企業が失敗しているからです。

初期のシステムの導入による成功確率が高かったのは特定の個人の作業の単純な置き換えであり、特定の個人本人がそれを操作するのが基本だったため

AIやRPAが失敗しやすく、パソコンやオフィスソフトなどの導入が成功しやすい理由はなぜでしょうか。その理由は利用者の想定、解決する問題のスコープにあります。パソコンやオフィスソフトは、特定の個人が利用することが想定されており、その人が把握している業務を、その人が操作することで、業務の負担を減らし、圧倒的にスピードを速めることに成功しました。自分がやっていた業務を、自分がやるわけですから、当然、パソコンなどによる処理速度の向上というメリットばかりを得ることができるため、多くの現場で投資が成功することができました。特定の個人の作業の置き換えは、その個人がソリューションを使う以上、失敗する確率は極めて少ないわけです。できていた人が、より早く、ミスが少なくできるようになるための支援ツールですから、成功する可能性は極めて高くなります。

AIやRPAの失敗確率が高いのは誰かの業務の単純な代替ではなく、ビジネスのワークフロー全体を考えて導入する必要があるため

AIやRPAといった現代の自動化システムの導入に成功するためにはどうしていくべきか。その答えはビジネス全体に考えることにあります。どんなものであっても、常に成功者から学ぶというのが、最も効率的でかつ確実な方法です。そこで最初にやるべきことはロールモデルの調査です。代表的な成功事例としてはAmazonやFacebookにGoogleといった企業が挙げられます。どれもIT系の企業だから事例になどならないと考えるのは早計で、これらの企業の事例の研究はすべての業界、企業に有益なものです。これらの共通点としていえるのは、ビジネス全体を自動化する前提で考えられていることです。昔からのビジネスモデルの多くは、労働集約型で人が働くことがビジネスの基本となっており、人を介在させない、人がいない前提では全体設計がされていません。パソコンなどが、こうした構造においても有益に機能するのは、ここまでお話を聞いていただければわかっていただけると思います。

人を必要とする前提で設計されたビジネスモデルの中で、AIやRPAを活かしていこうとすると、人がシステムにあわせるか、システムが人にあわせるかのどちらか択一を迫られることが多くなります。この場合、どちらにあわせても無理が生じて失敗するという確率が極めて高くなるというわけです。本気で成功を目指すのであれば、既存のモデルのなかで活用できるところはないか、といった考え方ではなく、そもそも人が働く必要がない、完全自動化を究極の目標とおいて、そこからマイルストーンを引いて、現実的に達成可能な状態を設計し、プロジェクトを進行していくということが必要になります。

全く新しい会社をこれから設立する気持ちで「人が介在しないでビジネスを回すためにはどうすべきか」という問いに答えをだしていく

人が働く前提で作られたこれまでのビジネスを、自動化していくための最も簡単で確実な設計方法は「人が介在しないでビジネスを回すためにはどうすべきか」を考え直すことです。多くの人は既存のビジネス構造、ワークフロー、ルールに頭が縛れており、正しい自動化のための考え方ができない状態にあります。今、目の前にある業務を自動化させることに意識が捉われてしまうからです。今から新しい会社を作るとしたらどんな会社にするべきか、これからの自動化が進んで企業間の競争の中で勝っていける構造を取り入れるために、本当に必要な人材はどんな人なのか、構造、ルール、ワークフロー、必要な人材などすべてをゼロから考えてみると、正しい設計が可能になります。