自動化、生産性の向上プロジェクトの結果がいまひとつな時は問題設定を疑ってみよう

自動化、業務改善、効率化といった言葉はビジネスの世界では日常的に使われるようになり、多くの組織で日々新しいプロジェクトが開始されています。その背景には人手不足に加えて、賃金の高騰、物価高など、本気で生産性を上げていかなければ、適正利益を残すことはできずに事業継続ができない未来がまっているという、極めて厳しい現実があります。そうしたこともあり、どの組織においてもプロジェクトはトップレベルからの指示、介入が入るほど本気で取り組まれています。しかし、実際にプロジェクトを進めてみると、なぜか効果が限定的で、結果はいまひとつ、どうにもすっきりしないということがよく起こります。その原因のひとつは問題の認識、スコープしている時間軸の誤りによるものです。

リソースが足りないと思ったら人材不足が問題?プロジェクトの目標に設定すべき問題は何?

例えば「人が足りない」という現象があったときに、わかりやすい解決策は人材採用を強化するということになります。ただし、なぜ人が足りないのかを考えていくと、離職率が高いからとなれば、離職の原因の解消が重要になります。しかし、そうなると人が足りない期間が長くなり、事業運営に支障をきたすということから、採用を行いながら、離職問題の解決を図るということになるわけです。

しかし、採用強化、離職防止に対処していても、さらに異なる上位階層、たとえば市場レベルの問題が起きれば、「人が足りない」という問題はもはや問題ではなくなります。その会社が提供している主力サービスが、AIの飛躍的な発展で不要になり、事業のニーズがなくなる事態が発生したと考えているとイメージがつきやすいでしょうか。こうなってくると、もはや人手不足は問題ではなくなり、「人が過剰である」ということが問題に置き換わります。労使間の契約、法的な問題によって一度増やした人を簡単に切ることができないとなると、今度は「人を養うだけの収益が不足している」という問題に発展していきます。

また、同様の「人が足りない」という現象について、実際には「処理能力が足りない」と解釈することもできます。残念なことに複雑な業務を行っている現場では、必要とされる能力を明文化することは難しく、仕事の難易度と、従事するスタッフの能力の関係性について研究がされていないケースが多くあります。その場合は「スタッフ教育が不足している」という問題の可能性もあります。また、教育では問題解消が難しい場合は、「適切な人材採用ができていない」という問題であることも考えられます。

さらに深く考えていくと「人が足りない」という問題は、本来は存在しない問題で、本当は「不要な業務に時間を使っている」という別な問題の結果、副産物として生まれているだけの現象ということも考えられます。目的から考えると、本来はやらなくて良いにも関わらず、思い込みでやったほうが良いと思っていること、過剰にやってしまっているということはどの職場でも少なからず起こっています。その結果として、やるべきことができていない、人が足りないからだという問題に見えているだけということです。

時間軸で考えて問題の構造を整理することが重要。時間とともに悪化するものもあれば自然解消するものもあり。それを踏まえてちょうど良い解決策を探そう

このように一見するとだれでも特定が簡単そうにみえる明らかな問題であっても、それを問題たらしめるのかを特定し、本当にこれが問題だと正しく確定させることは簡単なことではありません。正しい判断をするためには、正しい目標設定、そして正しい現状把握のための数値が必要です。いくら頑張ったところで、目標が達成不可能なものであったり、今が永遠に続くという、世界が普遍という実態にあわない前提にたっていたとしたら問題の定義も確実に間違えてしまいます。

また、問題と断定できたとしても、時間軸を変えてみると実は問題ではなくなるものもあります。今年でみると問題だが、5年後にはむしろ好ましい状態といえる、というものも少なくないためです。ただし、その時間軸に到達するまでの期間においては、問題として存在するわけですから完全な放置もできるわけではありません。そこで大事になってくるのが「ちょうど良い解決策」という考え方です。永続的に問題であるものを解決するためには、永続的な取り組みとして本気の予算とリソースが必要になります。しかし、今年1年もちたえられれば良いと割り切ることができれば、これくらいでいいという基準を、プロジェクトメンバーの中ではっきりと作ることができます。過ぎたるは及ばざるがごとし、とはよく言ったもので、過剰なリソース、予算を減らしてちょうど良い判断ができれば、今の問題を解決するための取り組みと、先々の問題を解決するための取り組みの両方を実践していくことも可能になります。

問題ははっきりとわかっているんだ、さあ、解決するぞと意気込む前に、本当の問題は何か、そしてそれは今だけでなく今後もそうなのか。こうした基本的なところ冷静に分析していくことは、一見すると遠回りのようで近道になるものです。少ないリソースの投資で、大きな成果を出すためには、問題定義にもう一度向き合ってみることを強くお勧めします。