人は目の前で起こっている問題はしっかりと見えます。そして声が大きな人が話す問題はよく耳に届きます。 大変そうであれば助けてあげたい気持ちにもなりますし、仕事の生産性が低いのは経営としても良いものではないので、 すぐに結果を出すためにRPAやノーコード・ローコードツール、マクロの導入などで解決を図るということは良くあります。 もちろん、これは見えているもの、聞こえてくる声をもとにして「それが問題である」ということを前提としたアクションです。 もちろんそれで大丈夫な時もありますが、後から調査してみると問題の設定を間違えてしまっていたということがよくあります。
イメージしやすい例でお話をするとこうなります。 水を汲みに行く仕事があったとして、それを1人の人が毎日に10往復して、水を貯めてくれていたとします。 担当する人はいつも辛そうで、10往復を達成できない日もありました。そこで上司は、水汲みをする人がもっと効率的に水汲みに集中できるよう、 水汲みする人を運ぶロボットを導入しました。 大変な仕事だった水汲みが楽になったため、社内の多くの人はこれは改善として大成功だといいました。 しかし、それをみていたコンサルタントが指摘しました。 「その水汲みという仕事をやめるために、水道を引けばいいんじゃないですか?」
様々な現場を調査していくと、これに非常に似た判断をしているケースは多くみられます。 やらなくていい仕事を頑張って自動化しているわけです。
さきほどの例では、目の前にある仕事は正しく間違っていない、それを処理する人の負担が問題だと定義したことで間違いが始まっています。 水を手に入れることが目的のはずなのに、いつのまにか水汲みの仕事を続けることが目的化してしまっているわけです。 冷静に考えれば、簡単そうな判断をどうして間違ってしまうのか。ここを理解することが非常に重要です。 長年、経営されてきた企業には、たくさんの役割、複雑なワークフロー、様々なシステムやオペレーションが作り出す多様なデータがあります。 さらには、関わる人も多く、その作業に従事している期間が長いほど、本質を問うような思考はまわらなくなっていきます。 気になることに全力投球する前に、全体の調査を適切に行い、構造的に捉えて進めていくことが大切です。