SFAツールを導入しても売上が上がらない?それはたぶん社内のデータを管理しているだけで、市場や競合のデータが足りていないからです
SFAなど営業の生産性を高めるためのツールは、多くの会社で一般的となってきており、こうしたシステムを利用していることは珍しいことではなくなってきました。しかし、一方で導入したものの、大きな成果はでていないという会社も非常に多く、投資が成功している会社とのギャップに注目が集まるようになっています。
SFAなどのシステムは営業に関連した情報を一元管理したり、工程ごとの数値を見える化することにより、無駄や不正解の状態などを簡単に把握することができるというメリットがあります。しかし、そもそも、営業を真剣に取り組んできていた会社であれば、似たことはエクセルなどを使って行ってきていたはずです。このような、以前からやっていた会社では、SFAは導入することにより売上向上などのメリットはあまり起こりません。エクセル管理と比べて、クラウド型になったのでアクセスのしやすくなりストレスの低減につながったり、小さな管理工数や労働時間の短縮に寄与するものといえます。売上アップのためではなく、コストダウンのためのシステムです。しかし、やり方によっては売上アップにももちろんつながります。そのために必要なのは社内データに加えて、市場データを取り込んで運用するということです。
営業データはあくまで社内基準の過去データ。もっと売り上げがあげられるのかを考えるためには市場や競合のデータも同時に必要
まず、意識をしなければならないのは社内のデータはこれまでの社内のスタッフが活動した結果であって、社外、つまり市場のなかの顧客すべての情報もなければ、競合の情報も含まれていないということです。たとえば、自社の売上が数年に渡って安定したいとします。この時、市場規模、競合をみたときに現状維持が続いているのか、伸びているのか、縮小しているのかによって分析結果は変わります。市場が伸びているにもかかわらず、現状維持の数字が続ているということは、マクロ的に見ると市場シェアは縮小しており、事業的にマイナスの状態に入っているといえます。また競合が伸びているなかで、自社が伸びていないのだとすると、これも実質的にはマイナスの状態です。自社の数字を見ていると、社内の営業やマーケティングの結果の数字を基準として考えたうえで、結論を出していくことになります。売り上げは以前の自社と比べてどうか、アポイント率は社内の平均と比べてどうかといった具合です。しかも、もし市場そのものが縮小傾向にある中だとすると、縮小率と売り上げの下落率は通常、比例していきます。そのため、単純に自社の売上を依然と比べるだけでは、自社の営業に問題があるのか、市場に問題があるのかを把握することができません。正しいうち手を考えるためには、社内のデータだけでなく、市場、つまり、社外のデータも同時に扱う必要があるのです。
問題は市場や競合データは簡単には手に入らないということ。そんな問題を解決してくれるのがインターネットの情報+AIという組み合わせ技
こうしたお話をすると、そんなことはわかっているが市場や競合のデータなどは手に入らないからできていないんだという方もいらっしゃると思います。簡単な解決策としては、帝国データバンクや東京商工リサーチといった企業の調査をアナログで行っているところからデータを購入して利用するという方法があります。しかし、残念ながらこうしたデータはざっくりとしたものであり、また非上場の企業の場合は、データの精度は非常に怪しいものとなります。原則として、インタビュアーと回答者の質問と答えがどちらも正しいはずであるという前提に立つものであり、聞き間違い、嘘の回答などの補正はまったく入っていないためです。経営戦略を作成する際などに、参考データのひとつとしては非常に有益なものですが、毎日活動する、スピードも量も求められる営業部が使うデータとしては残念ながら不適格といえます。では、どうやって営業が求めるスピード、頻度、正確性などを担保しつつ、市場や競合のデータを集めるのかというと、インターネットの情報とそれを解析するAIによって作り出すのがもっとも効果的です。でも、市場のデータといってもどうやって集めるのかと疑問を持たれる方も多いと思いますが、収集するデータを使うのではなく、収集したデータから考えて作っていくのです。
市場を形成するものは、供給者と提供者、つまり需要と供給です。一部の非常に大きな、国や行政などが手をださなければならないような、公共投資などの一部の市場を除くと、商品価格は需要と供給のバランスによって決まってきます。簡単にいえば、需要が多ければ価格は上がっていきますし、供給が多ければ価格は下がっていきます。また、供給者は、販売をするために自社のホームページで紹介をしたり、インターネット上のあらゆる場所で広告を打ったりしていります。経済学的に考えていくと、業界構造というのは非常に硬直的で、類似のビジネスをしている、いわゆる競合と自社というのは、利益率であったり、コスト比率などは一般的に似ていきます。一部の特殊な仕組み、強みを持っているところを除けば、利用されている広告であったり、販売されている価格であったり、社員数などから、フェルミ推定を使うことでかなりの精度で、公開されていない数字をはじき出すことができます。こうした数字は、データが多ければ多いほど、正確性を増していきますが、利用するデータが多いということは収集するデータ量も増えていくということになり、その分、運用コストも上がっていくことなります。最終的には、現実的に共用できるコストのなかで、重要と思われる外部データをどうやって収集し、AIを活用してどのように外部データを作り出していくのかというバランスはとることになります。
このようにして作り出した市場内のデータと、自社のデータの両方を活用することで、営業やマーケティングは、正しい状態を把握することができるようになり、適切な努力でしっかりと売上を上げることができるようになります。市場が縮小し、競合も軒並み売上を下げている中で、なぜ売上があがらないんだと声を荒げるだけの昔ながらの方法では、内需縮小が加速していく日本では目標達成には限界があります。より良い市場の分析も同時に行い、より効率ていな売上を上げられる方法の模索も行っていく。こうした営業の強化策を進めると、管理職も現場のスタッフも、そして会社もみんなが笑顔になれるはずです。